寒い時期の病気と言えば、インフルエンザを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
インフルエンザは感染力が高く、流行すると全国で約1000万人が感染するといわれています。
ただインフルエンザについてはほとんどの人が知っている感染症なので、多くの人が病院を受診し適切な治療を受けています。
でも中には重い合併症を併発してしまい死に至ってしまうことをみなさんは知っていますか?
実際インフルエンザによって、直接的及び間接的に亡くなった年間死亡者数は約1万人といわれています。
インフルエンザは重症化する前に治療を受ければ、比較的短期間で治ります。
なので早期にインフルエンザと気付けるように、もう一度症状について確認しておきましょう。
インフルエンザって何?
インフルエンザの症状の説明に入る前に、インフルエンザの基本情報をおさらいしておきましょう。
インフルエンザというものはインフルエンザウイルスによって引き起こされるもので、ウイルスにはA型、B型、C型があります。
この中で、冬に流行する季節性のものはA型とB型です。
A型のインフルエンザウイルスは変化しやすく、数十年に一度、新型ウイルスが出現して大流行することがあります。
(スペインかぜ、アジアかぜ、新型インフルエンザなど)
これらと違ってC型は季節的な流行ではなく、散発的に起こります。
インフルエンザの症状
インフルエンザの症状は初めにお伝えしたように
- 高い熱(38℃以上)
- 全身の関節の痛み、筋肉痛
が特徴的な症状と言えます。
他にも頭痛や咳、のどの痛みや鼻炎、倦怠感などが症状として現れることがあります。
そして重症化すると最悪死に至ることもあるのも特徴の1つといえます。
風邪との違い
まずインフルエンザですが、インフルエンザはウイルスの感染によって起こります。
主な感染経路は飛沫感染で、これらは感染者の咳やくしゃみによってウイルスを含んだ飛沫が飛び散り、それを吸い込むことで感染します。
また時には接触感染によっても感染する場合があります。
これは感染者が触れたものにウイルスが付着し、それに触れた手指で鼻や口に触れて感染するものです。
そして風邪についてですが、風邪は主にアデノウィルス、ライノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスの感染、または細菌の感染によって起こります。
感染経路接触感染や飛沫感染です。
風邪の典型的な症状は
- のどの痛み
- 咳
- 鼻炎
- 中等度の発熱(38℃前後)
で重症化することはほとんどありません。
インフルエンザ | 風邪 | |
---|---|---|
病原体
|
インフルエンザウイルス | ・アデノウィルス ・ライノウイルス ・コロナウイルス ・細菌 |
感染経路
|
主に飛沫感染。接触感染の場合もある | 接触感染や飛沫感染 |
発症
|
急激 | 比較的ゆっくり |
症状
|
・高熱(38℃以上) ・全身の関節痛 ・筋肉痛 ・頭痛など 重症化すると死亡することもある |
・微熱 ・のどの痛み ・咳 ・鼻炎 重症化する可能性は低い |
症状の部位
|
強い倦怠感など全身症状 | 鼻、のどなど局所的 |
インフルエンザの無症候性感染
インフルエンザの主な症状は先ほど説明した通りですが、実は症状がでない無症候性感染というものもあります。
2009年の新型インフルエンザが大流行した時、中国の複数の地域で調査した結果、8~32%が発熱のない軽症であったことがわかりました。
またイギリスの全寮制の学校では3分の1が無症候性感染であったという報告もあります。
この場合インフルエンザと判明するのが遅れることになるので、感染が拡大してしまう要因の1つといえます。
インフルエンザによる重症化に注意
インフルエンザに感染した後、重症化しやすいのは合併症を起こした時です。
特に子供ではインフルエンザ脳症、高齢者や慢性的な持病(呼吸器や心臓、腎臓、糖尿病など)のある人は肺炎に注意して欲しいです。
インフルエンザ脳症
インフルエンザ脳症はインフルエンザウイルスの感染によって脳の中枢神経が障害され、
- 突然の高熱
- 幻覚
- 言動の異常
- 意識障害
- けいれん
などを起こします。
発症のしやすさは1歳ぐらいで、幼児期に最も多くみられます。
インフルエンザ脳症の患者数は、毎年50~200人程度と感染者数からみれば少ないです。
ただ致死率は8~9%といわれているので油断は禁物です。
また死に至ることはなくても、約25%に
- てんかん
- 知的障害
- 精神障害
などの後遺症が残ることがあります。
子供が
- 意識がはっきりせず、呼びかけに反応しない
- 意味不明なことを言う
- 顔色がよくない
- 嘔吐しても気分が回復しない
- けいれんしている
などインフルエンザ脳症が疑われる症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
肺炎
高齢者の方がインフルエンザにかかると気道の粘膜などが弱くなり、そこに細菌やウイルスが侵入すると肺炎を発症しやすくなります。
高齢者はインフルエンザを発症しても、あまり熱は高くならない傾向があり感染していることに気付かない恐れがあります。
- 微熱が数日続く
- 咳が長引く
- 呼吸が浅くてあらい
- 黄色や緑色の膿のような痰
などの症状がある場合には、肺炎を起こしている可能性があるので早めに受診しておきましょう。
インフルエンザの潜伏期間
※潜伏期間⇒病原体が体に侵入してから症状が現れるまでの期間
インフルエンザの潜伏期間はとても短く16時間~5日で、2~3日が最も多いといわれています。
このように潜伏期間が短いのは、インフルエンザの増殖力が非常に高いからです。
もし1つのウイルスが感染すると8時間後には100個に増殖し、16時間後には1万個に、24時間後にはなんと100万個にまで増えてしまいます。
インフルエンザの症状が急に現れるのもこの驚異的な増殖力のためです。
インフルエンザは、発症する1日前から感染力をもっているといわれています。
なので人によっては、感染した当日から感染させてしまう危険性があります。
まとめ
インフルエンザに感染することは珍しくないため、症状を軽くみてしまう方がいます。
しかし実際は亡くなってしまうこともあり、周りの人に感染させないためにも早く治療することが大切です。
インフルエンザの疑いのある症状がみられたら、すぐに受診するようにしましょう。
参考文献
・新型インフルエンザに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
・新型インフルエンザ(パンデミックH1N1 2009)の現状
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/9/99_2080/_pdf
・インフルエンザ脳症ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/09/dl/info0925-01.pdf