狭心症の症状として胸痛を思い浮かべる人は多いでしょう。
ただ狭心症の症状これだけではありません。
胸痛がおこらず、歯や肩が痛くなることも少なくないのです。
また胸痛においても起きやすい場面、時間帯も狭心症の原因によって異なります。
今回は狭心症の症状はどのようなものなのか、発症の原因別にまとめてみました!
狭心症とは
心臓は全身に血液を送るポンプのような働きをしている筋肉です。
これによって、足や手に栄養や酸素を届けることができます。
でも心臓自体にも酸素や栄養素は必要ですよね。
その役割をしてくれるのが冠動脈です。
そしてこの冠動脈に異常が発症し、血液が流れにくくなって起こるのが狭心症です。
この狭心症は寒い時期の12~2月に起こることが多く、最も多い1月は7月の1.5倍以上となります。
狭心症と似たような病態には心筋梗塞があります。
こちらは冠動脈に血栓(血の塊)などができて、血液の流れが止ってしまった状態をいいます。
そのため心臓の筋肉が壊死するなど、狭心症より重い症状がでることがあります。
さて、本題の狭心症ですが発症の原因によって、次の3つに分類されます。
- 労作性狭心症
- 冠れん縮性狭心症
- 微小血管狭心症
同じ狭心症でもそれぞれの病態によって症状は異なるので、タイプ別に症状を見ていきましょう!
労作性狭心症の症状
労作性狭心症は主に動脈硬化による冠動脈の狭窄が原因で起こる狭心症です。
『労作性』とあるように、運動した時または興奮した時に症状がでるのが特徴です。
主な労作性狭心症の症状は締め付けられるような胸の痛みです。
この痛みに伴って
- 強い動機
- 息苦しさ
- 冷や汗
- 吐き気
などがおこることがあります。
これらの症状は、だいたい5~10分間ほどで治まります。
ただこの症状が発作を抑える薬を使って治まらず、30分間以上続く場合は心筋梗塞の可能性があるので注意が必要です。
数分でも胸の辺りに違和感を感じた場合はできるだけ早く、医療機関を受診するようにしましょう。
関連痛とは
労作性狭心症では心臓から離れた場所に痛みが現れることもあります。
このように、原因となる場所から離れた所に痛みが生じることを関連痛(放散痛)といいます。
狭心症での関連痛では
- 肩
- 腕
- 背中
- 歯
など主に上半身の左側に痛みがでることがあります。
狭心症が起こると心臓が痛みを感じ痛覚神経(痛みを感じる神経)を経て、脊髄、脳へと刺激が伝わり「胸が痛い」と感じます。
この脊髄ですが歯や肩、腕や背中などからの痛覚神経ともつながっていて、心臓からくる痛覚神経と同じ束になっています。
そのため狭心症によって心臓から脊髄へ刺激が伝わるとこれらの痛覚神経にも刺激が伝わってしまい、他の場所にも痛みがでてしまうのです。
労作性狭心症の症状は、最初にお伝えしたように運動時や興奮時など心臓の活動量が増えた時に起こります。
なので
- 階段を上った時に毎回肩が痛くなる
- 散歩中に坂道を歩くと毎回歯が痛くなる
など運動したときにいつも痛みがでることが関連痛の大きなサインになります。
もしスポーツをした時や怒るなど興奮した時に限って症状がでる場合は、狭心症の疑いがあるので受診するようにしましょう。
・運動時に起こる ・再現性がある
狭心症の症状が感じにくい人も
狭心症の人の中でも特に注意してほしい人は、高齢者や糖尿病を患っている人です。
このような方は神経に障害が起きていることがあり、狭心症の症状が起きても軽い息苦しさ程度にしか感じない方もいらっしゃいます。
なので
- 糖尿病で血糖値がコントロールできていない
- 70歳以上で動脈硬化の要因(高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙)がある
人は定期的に心臓の検査をするようにしましょう。
冠れん縮性狭心症の症状
冠れん縮性狭心症は、冠動脈が痙攣による一時的な狭窄が原因の狭心症です。
労作性狭心症とは違い、睡眠中の深夜または早朝に胸の痛みや息苦しさを感じます。
また発作時に胸痛などの症状が強くなったり、弱くなったりするのを短時間で繰り返すことがあるのも冠れん縮性狭心症の特徴です。
冠動脈が狭窄する原因ははっきりとはわかっていませんが、自律神経のバランスの乱れが影響しているのではないかと考えられています。
自律神経とは交感神経と副交感神経のことをいい、字のとおり意識せず自律的に働く神経です。
専門的な内容になると難しいので
- 興奮時→交感神経が働く
- 安静時→副交感神経が働く
と覚えて下さい。
この自律神経ですが睡眠時には副交感神経が優位になり、反対に起床時には交感神経が優位になります。
それに伴って血管が広がったり縮まったりするので、深夜や早朝に冠動脈の痙攣が起こるといわれています。
冠れん縮性狭心症を起こしやすい人とは
日本人は冠れん縮性狭心症が多く、狭心症全体の約40%といわれています。
なので発症の要因となる危険因子は知っておいたほうがいいでしょう。
今までの研究で報告されている危険因子は
- 喫煙
- ストレス
- 飲酒
です。
特に喫煙に関しては強い因果関係が示されています。
冠れん縮性狭心症の怖いところは初めて起こった場合でもいきなり心臓が止まってしまう、突然死に至ることがあることです。
大変だと思いますが、喫煙をしている人は禁煙を開始しましょう。
またストレスにおいては働き世代や離婚、失業、被災を経験した人は抱え込みやすいので注意が必要です。
微小血管狭心症の症状
労作性狭心症や冠れん縮性狭心症は冠動脈による狭窄が原因でした。
しかしこの狭心症はその先の無数にある微小冠動脈に異常が原因で起こる狭心症です。
この微小冠動脈というのは心筋の内部に張り巡らされており、すみずみの組織まで栄養素や酸素を届けています。
そのためこの微小冠動脈が十分に拡張しなかったり異常に収縮したりすると、冠動脈は正常でも心筋には十分に行きわたらず胸痛などが起こってしまいます。
このような血流の異常が起こる理由は、残念ながらよくわかっていません。
ただ微小血管狭心症は更年期の女性に多いため、女性ホルモンの低下が関連しているのではないかといわれています。
微小血管狭心症も主な症状は胸痛です。
しかし他の狭心症とは違い、胸痛が20分から数時間と長くなる傾向があります。
そして運動時と安静時、どちらの時でも症状が起きることがあるのも特徴ですね。
まとめ
狭心症の症状が軽いうちに見つけることができれば、重症化を防ぐことができます。
こういうものがあるんだ程度で構わないので、狭心症の主な症状について頭の片隅に入れておいて下さい。
狭心症の治療については別記事にまとめてありますので、ぜひ参考にして下さい!
参考資料
・冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_ogawah_h.pdf
・急性冠症候群の診療に関するガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2002_yamaguchi_d.pdf
・微小血管狭心症をご存じですか。
http://www.jhf.or.jp/sp/news/2016/004291/